漆はウルシの木からにじみ出る樹液で、実用性と精神性を兼ね備えた自然塗料として、縄文時代より大切に使われてまいりました。
うるしの語源は「うるわし(麗し)」とも「うるむ(潤む)」ともいわれており、水に濡れたような瑞々しい艶やかさとぬくもりが魅力です。
谷崎文学「陰翳礼讃」にも描かれた、侘び寂びにも通じる漆の美意識は、日本の魂とも言えます。

輪島塗

600年の歴史を持つ輪島塗は、木地づくり、輪島地の粉と布着せを特徴とする下地づくり、中塗、上塗、加飾など、匠の技を極めた分業制を特徴としています。
100以上の工程を経て作り出され、堅牢さと優美さを兼ね備えた輪島塗。技術的にも芸術的にも価値の高いものとして、国の重要無形文化財に指定されている、伝統工芸品です。

先人の智慧と伝統は脈々と今日に受け継がれ、職人達のたゆまぬ努力により未来へと繋がれています。
お直しが可能で長くお使い頂ける輪島塗は、サステナブルで実用的な工芸品。使うほどに底艶が生まれ、毎日の暮らしを心豊かに彩り、「良いものを長く大切に使う」という日本の美徳を伝えています。

環境

今、世界では、海洋プラスチック問題や環境汚染が大きな問題となっています。

木の命である漆を器に宿す漆器は、素材や道具のすべてに自然のものを用い、製作過程でCO2を排出することなく、最後は環境を汚染することなく土に還ります。
職人は伝統の技で丈夫な漆器をつくり、使い手はお直ししながら長く大切に使い、ごみにすることなく次世代へ受け継いでいく。

これはまさに今世界中で求められている、省エネルギーで持続可能な循環型社会を作るのに役立ちます。
漆は、人に優しく、環境破壊と無縁な、極めて優れたエコ素材なのです。